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お知らせ

眼窩蜂巣炎

2024年11月07日


眼窩蜂巣炎は軽度の場合眼瞼の発赤、腫脹、眼球の痛み、球結膜の充血、浮腫などの症状からはじまりますので放置されることもあります。しかし進行すると眼球の突出、眼瞼下垂、開瞼困難、視力障害、眼球運動障害(両眼で見たとき物が2つに見える)ことなどの症状として発症します。強い炎症のときは視神経や網膜の浮腫、中心動脈閉塞をおこし高度の視力障害を起こすなどの症状が発症し、血液検査ではCRPの増加や赤沈の値の上昇を認めることもあります。
眼窩蜂巣炎は眼球周囲の眼窩内疎性結合織に生じた亜急性または急性の化膿性疾患で頻度としては少ない疾患ですが一旦発症すると炎症は急速に進行し、お示ししたように強い眼症状が発症します。組織の壊死が進行すると眼窩膿瘍を形成し重篤な場合は逆行性の髄膜炎や海綿静脈洞血栓症などを発症し生命の危険性にも及ぶ急性疾患です。

病態:眼窩蜂巣炎は眼窩に原発するものとして眼窩内異物、外傷、手術などの直接感染があります。隣接臓器からの炎症の波及で発症する場合もあり11から20歳台に多い副鼻腔炎からの波及、10歳以下に多い歯根骨膜炎。涙器、全眼球炎などから発症する場合もあります。また顔面の炎症である麦粒腫から眼窩蜂巣炎に発達す場合も稀にあります。原因疾患のうち副鼻腔から菌が波及して発症する場合が最も多く報告されていますがこれは眼窩の静脈系と顔面のや鼻内の静脈とが直接つながっていることに起因しています。副鼻腔疾患は上顎洞、し骨洞、前頭洞の順に多く小児ではし骨洞に起因するものが最も多く報告されています。

原因菌:黄色ぶどう球菌がもっとも多く溶血連鎖球菌、肺炎球菌、大腸菌、インフルエンザ菌、嫌気性緑膿菌などの菌が原因であると報告されています。嫌気性菌は口腔・副鼻腔疾患の起因菌となることが多いため、これらの菌については十分注意することが重要です。インフルエンザ菌に起因するものは3歳以下の幼児に多く全身的に高熱や白血球の増加が発症し重篤な状態を生じることがあり注意をようします。化膿菌以外にも梅毒、結核菌、サルコイドーシスなどの全身的な慢性疾患が原因であることなどが報告されています。
また、重篤な糖尿病、白血病、ステロイド剤の長期全身投与、腎不全による長期人口透析患者、抗生物質を長期全身投与をうけている患者で真菌による眼窩真菌症が発症することも報告されています。

検査:原因の早期究明が重要です。耳鼻科、歯科などの依頼を行い精査することや外傷の有無、異物が体内に混入しているかの有無を確認することが重要です。病巣部位から切開、排膿して得られた原因菌の同定も確実に行うことが最重要でしょう。X線CTスキャンによる病巣範囲の把握も重要です。(採血による白血球の増加、CRP、血沈の増加は必須事項です)

治療:抗生物質の全身大量投与が基本です。同定した菌の薬剤感受性を確認し的確に治療します。原因菌が同定できていない状態でも診断がついた場合広域スペクトルの抗菌剤の全身投与が必要でしょう。(起因菌の同定には時間がかかることが多く病気の進行が早く治療が間に合わない場合がありますので早期の治療が必要です。また消炎のためにステロイド剤の全身投与が必要な場合があります。)膿瘍を形成している場合は積極的な切開、排膿を行い異物外傷では異物摘出をおこないます。

眼窩蜂巣炎は珍しい疾患ですが発症すると重篤な疾患である場合が多くたとえ麦粒腫(ものもらい)であっても眼科を受診し早期に発症を予防することが重要でしょう。