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眼内に薬剤がはいった場合の角結膜化学的損傷の病態と自分でできる緊急処置

2023年04月10日


患者様が眼に薬剤などを誤っていれてしまうことはよくあることです。このような状況で発症した眼の障害を角結膜化学的損傷といいます。どのような薬剤が入ったかによって眼の障害程度はことなります。まず行うことは眼科を受診する前にできるだけ早く水道水でかまいませんので10分程度よく洗眼しましょう。どのような損傷でもすぐに洗眼することにより損傷は軽減できます。

角結膜化学的損傷の原因となる物質により障害の状態はことなります。原因物質は酸、アルカリ、金属およびその化合物、有機性薬剤、非金属およびその化合物、有毒ガス類におおまかに分類できます。

酸は塩酸、硫酸(バッテリー液)、硝酸、酢酸、トイレ用洗剤の一部が該当し塩酸、硝酸は還元剤として遊離電子と結合し蛋白変性作用があります。塩酸、硫酸は細胞内脱水を起こし障害の原因になります。酸は蛋白変性作用のため細胞内酵素の不活性化がしょうじますが組織透過性が低く変性した組織がバリアになるため障害が組織表層にとどまることが多いとされています。

アルカリは苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニア、生石灰(乾燥剤)、セメント、モルタル、冷却溶媒、中性でない家庭用洗剤、カビ取り剤、パーマ液、毛染め液、脱毛剤などがあります。アルカリは細胞膜の脂質を融解し組織蛋白の変性をおこします。すなわち細胞膜を破壊し融解します。さらにアルカリ性物質が脂溶性であるために組織浸透性が高く短時間で深部まで障害を及ぼす結果となります。

金属およびその化合物はナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)、ヨード、マグネシウム、水銀、過マンガン酸カリなどがあります。次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリは酸化による蛋白凝固作用、アルキル水銀は還元剤で蛋白変性作用があります。

有機性薬剤は石炭酸、クレゾール、ピクリン酸、ヒビテン液、ベンジンやアセトン、有機溶媒(ペンキ、化粧水、香水)、界面活性剤(家庭用洗剤、コンタクトケア用品)などがあります。石炭酸、とクレゾールは腐食剤、クレゾールとピクリン酸は細胞蛋白と塩を形成し、原形質毒性を示します。界面活性剤は細胞の脂質に作用し膜機能を消失させます。

これらの化学外傷の原因物質は労働災害と関係することが多く患者様もまず洗眼を十分行った上で医療機関を受診しましょう。