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加齢黄斑変性(AMD)について

2023年03月13日


加齢黄斑変性は2019年の統計によりますとわが国の失明原因の4位になっています。
ちなみに1位は緑内障、2位は網膜色素変性症、3位は糖尿病網膜症、5位は網脈絡膜萎縮となっています。加齢黄斑変性の初期の症状は画像の中心が歪んで見えることからはじまります(変視症)。また画像の中心部に見えない部分も発生します(中心暗点)。さらに見たい部分が不鮮明に見えます(コントラスト感度の低下)。進行すると症状は悪化し次第に視力が低下していきます。
加齢黄斑変性は萎縮型と滲出型に大きく分類できます。
萎縮型は網膜色素上皮がしだいに萎縮していき、網膜が障害され視力がしだいに低下する病気です。網膜に慢性的な炎症や酸化ストレスにより網膜色素上皮が萎縮しさらに網膜視細胞が萎縮して視力障害を起こします。
滲出型加齢黄斑変性は脈絡膜から異常な新生血管が網膜の下に侵入し出血や血液成分が漏出することで網膜が障害されて視力が低下します。
加齢黄斑変性の前駆病変(50歳以上の7人に1人の割合で発症します。)として以下の3つの網膜所見が重要です。
1,網膜色素上皮異常:色素沈着、脱色素、色素のむらが網膜色素上皮細胞に発症します。
2,ドルーゼン:網膜色素上皮下の脂質沈着物で増加すると加齢黄斑変性になりやすくなります。
3,網膜色素上皮剥離:脂質が色素上皮下にたまり網膜色素上皮がはがれやすくなります。

ドルーゼンと加齢黄斑変性の発症リスクの関係
ドルーゼンは加齢黄斑変性(AMD)と密接な関係があり以下に示す4つの段階により加齢黄斑変性の発症するリスクはことなります。
第一段階:黄斑の中心から約3mm以内にドルーゼンがないか小型のもののみしか存在しない段階でこの状態では5年以内にAMDが発症するリスクはありません。
第二段階:色素沈着、脱色素、色素のむらが網膜色素上皮細胞に発症します。ドルーゼンの中型の大きさのものが20個未満発症している状態でこの段階になりますと5年以内にAMDが発症するリスクは1%程度となります。
第三段階:網膜色素上皮剥離が発症しドルーゼンの中型のものが20個以上発症しているか大型のドルーゼンが発症した状態でこの段階になりますと5年以内にAMDが発症するリスクは18%程度となります。
第四段階:片方の眼にAMDが発症している段階でこの段階になりますと5年以内にAMDが発症するリスクは43%程度となります。

加齢黄斑変性は進行に生活習慣も関係しています。
タバコは悪化要因となるため禁煙しましょう。また強い光も悪化要因とされ外出時にはサングラスを着用したりつばの大きな帽子を着用しましょう。暗いところでは瞳が大きくなるため網膜に達する光の量が多くなります。暗いところでのテレビ、スマートフォンの使用は控えましょう。サプリメントの摂取も有効とされておりルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などが推奨されるサプリメントの主成分となっています。

加齢黄斑変性の治療指針
前駆病変、萎縮型加齢黄斑変性はサプリメントの摂取などや先ほど記載した生活習慣を心がけることで進行状態の経過を観察することが重要です。
滲出型加齢黄斑変性が発症してしまった場合は脈絡膜新生血管が黄斑部を含む場合は抗血管新生療法(抗VEGF療法)を行います。ポリープ状脈絡膜血管症、網膜血管腫瘍状増殖が発症している場合には光線力学的療法の併用も選択される場合があります。抗VEGF療法とは体内に存在する脈絡膜新生血管の成長を活性化させる血管内皮増殖因子(VEGF)という物質がありますが抗血管新生療法(抗VEGF療法)はこのVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することで新生血管の増殖や成長を抑制する療法です。光線力学的療法(PDT)とはビスダインという光に反応する薬剤を体内に注射し、病変部にPDT専用のレーザーを照射する方法です。正常な網膜に影響を与えない程度の弱いレーザーによって薬剤を活性化させ網膜へのダメージを抑えながら新生血管を退縮させます。
以前ではAMDに対してあまり有効な治療法はなかったため新生血管を糖尿病網膜症に使用するレーザー光で焼き固める治療法がおこなわれていましたが周辺の正常組織にもダメージを与え視力障害の原因となってしまうため現在はほとんどおこなわれていません。医療の進歩によりさらに有効な治療法が開発されることを期待しましょう。