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屈折矯正手術の種類(慶應義塾大学 根岸 一乃先生の論文より引用)

2022年02月28日


 屈折矯正手術は大きく分けて角膜屈折矯正手術と眼内屈折矯正手術があります。現状においては,角膜屈折矯正手術の主流はエキシマレーザー角膜屈折矯正手術であり,なかでもLASIKは国内でも最も多くの件数が行われています。それに次いで後房型有水晶体IOL,フェムトセカンドレーザーによるrefractive lenticule extraction(ReLEx),エキシマレーザーによるSurface ablation〔photorefractive keratectomy(PRK)など,角膜フラップを作成せずに実質浅層から切除する方法〕の順に手術がおこなわれています。

1.エキシマレーザー角膜屈折矯正手術
 エキシマレーザー角膜屈折矯正手術は,エキシマレーザーにより角膜切除を行いますが,当初は,角膜切除に伴う高次収差の増加によって視機能低下(コントラスト感度の低下,ハロー・グレアなど)が起こることが問題でした。近年,術前の眼球高次収差(不正乱視成分)や角膜形状の不正を考慮して行うカスタムアブレーションが行われており,以前より視機能は向上しており、患者様の満足度も高いと報告されています。合併症としては,ドライアイ,層間炎症(diffuse lamellar keratitis),上皮下混濁(主にSurface ablationで問題となります),実質内上皮増殖,感染,角膜前方偏位(ケラテクタジア)などの報告があります。国内の前向き観察研究の結果では,頻度はドライアイ(点眼または涙点プラグの治療を要したもの)が最も高く,13,642眼中236眼(1.73%)でしたが,感染や角膜前方偏位は1例もなかったと報告されています。
術式としてはLASIKが大半を占めていますが,Surface ablationは長期的にLASIKよりも屈折の戻りが少なく,ドライアイもより軽度であることから,近年見直されています。
LASIKの術後管理は,抗菌薬および副腎皮質ステロイド(0・1%フルオロメトロンなど)を手術当日から1週間程度継続することです。Surface ablationの場合は,副腎皮質ステロイドは3か月間程度継続する必要があります。ドライアイ,上皮下混濁などの合併症に対し,適宜追加治療を行うことが必要です。上皮下混濁に対してはやはり副腎皮質ステロイド点眼が有効です。

2、有水晶体IOL挿入術
 有水晶体IOLは大きく分けて前房型,後房型に分類されます。このうち後房型近視矯正用のimplantable collamer lens(ICL)は2010年に厚生労働省に承認され,現在の有水晶体IOLの国内シェアの大半を占めています。エキシマレーザー角膜屈折矯正手術では,強度近視を矯正した場合,高次収差の増加が大きくなりQOVが低下しますが,有水晶体IOL挿入術はそれと比較して高次収差増加によるQOVへの影響が少ないことが利点です。また、乱視矯正も精度が高いことも判明しています。後房型有水晶体IOLの手術成績は良好で,合併症(白内障,角膜内皮障害など)の頻度も低い結果がでています。現状では約10年以上の長期経過は不明であり,長期的に術後経過を観察する必要があります。術前後の投薬,および生活制限については,白内障手術に準じますが,術後炎症は非常に軽度です。

3.その他未承認手術
屈折矯正手術の中には未承認の治療ですが,国内で行われているものもあります。なかでもフェムトセカンドレーザーで角膜実質にレンチクルを作製し,除去して屈折矯正を行う術式としてReLExが国内でも一定数行われています。ReLExの中でも小切開からレンチクルを引き出す術式であるsmall incision lenticule extraction(SMILE)はフラップを作製しないため,ドライアイがLASIKよりも少なく角膜の強度も保たれます。しかし,エキシマレーザー角膜屈折矯正手術のようなカスタム治療ができないこと,視力回復がやや緩徐であることが欠点として挙げられます。角膜実質内リング(intrastromal corneal ring segment:ICRS)は角膜中間周辺部実質内に作製したトンネルにpolymethyl methacrylate(PMMA)製の弧状の板を挿入し,その部分を急峻化させ,隣接する角膜中央部を平坦化する術式です。当初は軽度近視の矯正目的に行われていましたが,現在では主として円錐角膜に対する治療目的に行われています。その他,高周波を角膜中間周辺部8~16か所に照射して照射部の角膜実質のコラーゲンを収縮させ,角膜中間周辺部のフラット化と隣接する中央部の急峻化を生じさせ,遠視を矯正する伝導性角膜形成術(conductive keratoplast:CK)や,角膜実質内に異物を移植する角膜インレーなども国内で行われていますが,一般的ではありません。

屈折矯正手術のガイドライン(適応と禁忌)
 エキシマレーザー角膜屈折矯正手術と有水晶体IOL挿入術の適応と禁忌に関しては日本眼科学会の屈折矯正手術のガイドライン(第7版)に示されています。エキシマレーザー角膜屈折矯正手術に関するガイドラインの主な要点としては,年齢18歳以上,屈折度が安定している例であり,矯正量は十分なインフォームド・コンセントのもと近視矯正は10Dまで,遠視および乱視矯正は6Dまでとなってます。禁忌は①円錐角膜,②活動性の外眼部炎症,③白内障(核性近視,水晶体に混濁あるいは亜脱臼などの異常がある場合も含む),④ぶどう膜炎や強膜炎に伴う活動性の内眼部炎症,⑤重症の糖尿病や重症のアトピー性疾患など,創傷治癒に影響を与える可能性の高い全身性あるいは免疫不全疾患,⑥妊娠中または授乳中の女性,⑦円錐角膜疑いなどが含まれています。有水晶体IOL挿入術については,適応は6Dを超える近視とし,3D以上6D未満の中等度近視と15Dを超える強度近視には慎重適応とされています。禁忌には前述の②~⑥の他に⑦進行性円錐角膜,⑧浅前房および角膜内皮障害が追加されます。以前は,有水晶体IOLは6Dを超える近視が対象でしたが,近年,軽度~中等度近視への有効性も報告され,屈折矯正手術のガイドラインも改訂されました。